資源・エネルギー・環境関連の触媒

資源・エネルギーと触媒
 原油・石炭などの化石燃料資源は、単なる蒸留や精製だけではなく、化学反応によって変化させられ、ガソリンや都市ガスなど使用しやすい形態になって、主にはエネルギー源として人々に供給されます。この過程でさまざまな触媒反応が利用されています。
環境触媒
 化石燃料から得られるエネルギーの多くは火力発電所で電力に変換されます。またこれに匹敵する多量のエネルギーが自動車などの輸送機関に用いられます。これらの燃焼過程では、野放しにすれば多量の環境汚染物質が発生します。その環境負荷を抑制するために、環境触媒が用いられています。電力・自動車の両産業は、環境触媒の支えがあるからこそ、この狭い国土で高密度の発展をすることができたといえます。

 そこで、このような資源・エネルギー・環境関連の触媒について解説します。触媒はプラスチック、医薬品、機能材料、油脂などの化学製品を作る過程でも使われていますが、ここで取り上げる資源・エネルギー・環境関連の触媒は、その使用量と人類社会に対する影響が非常に大きいことに特徴を持ちます。ここでは、製油所や石油関連産業の巨大なプラントで使われたり、自動車用など非常に多くの数量が使用されるこれらの触媒を紹介します。

 なお、化学産業一般では均一系触媒(主には、反応物が液体で触媒も液体)も広く使用されていますが、この分野で主に使われるのは不均一系触媒(つまり、反応物が気体や液体で触媒が固体)です。固体触媒について、個人的な体験も交えて紹介します。

 触媒とはどんな物質か、そこで行われる化学反応とはどんな物質変化かを順次述べると、たとえ分類しても、分厚い便覧になってしまいます。ここに述べたとおりです。しかし、資源・エネルギー・環境関連で使われる主要な触媒物質と化学反応をいくつか挙げてみると、なんとそれは暗記できるほど単純な話です。以下の話は、資源・エネルギー関連触媒と環境浄化触媒に2分しましたが、前者に分類した石油類の脱硫触媒はクリーン燃料製造という面からは環境浄化触媒にも分類できます。人によって分類に違いがあるので注意してください。

1.資源・エネルギー関連触媒

  • 流動接触分解触媒・・・・・・SiO2・Al2O3
  • 接触改質触媒・・・・・・・・Pt, Re/Al2O3
  • 脱硫触媒・・・・・・・・・・MoS, NiS, CoS/Al2O3
  • 水蒸気改質触媒・・・・・・・Ni/Al2O3

    2.環境浄化触媒

  • 脱硝触媒・・・・・・・・・・TiO2-V2O5
  • 自動車触媒・・・・・・・・Pt, Pd, Rh/Al2O3

     触媒の種類は数多く、本一冊分も勉強しなければいけないと思いきや、実は資源・エネルギー・環境関連の触媒に限ると、上記のように特定の金属と金属酸化物、わずかな金属硫化物だけなのです。現実の触媒では、第2、第3の添加成分もあるし、担体に至っては、物理構造や酸性度といった別の要素も加わってきます。しかし、ものごとを例外から入る姿勢は応用編に譲って、ここでは、触媒成分を超単純化してみたことを重ねて強調しておきます。

     なお、ここでは取り上げなかったものの、工業的触媒という視点からは、アンモニア合成触媒、エチレン・プロピレンの重合触媒も重要であることを付記します。


    (C) Catalysis Society of Japan 2007
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