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モリブデン酸化物ダイマー触媒
御園生 誠(名誉会員),田中虔一(非会員),難波征太郎(正会員)

  シリカ、アルミナなどの酸化物担体の表面にモリブデン酸化物のモノマーあるいはオリゴマーを固定化した触媒は、Yermakov, Hallらをはじめ多くの研究グループにより、基礎・応用両面から検討されてきた。モリブデン系化合物が選択酸化、脱硫反応などの実用上重要な触媒となる ことが、研究が活発な理由である。その中で、岩澤康裕氏らのグループは、1980年頃より、Mo2核π−アリル錯体から出発して、高温酸化処理することに よりモリブデン酸化物ダイマー(隣接する2個のMo酸化物モノマーを含む)を非晶質シリカ表面に固定化した触媒を合成し、(1)ダイマー構造の均質性が高 いこと、(2)触媒反応中におけるダイナミックな構造変化を明らかにしたこと、そして、(3)その触媒活性が著しく高いことを発表した(参考資料 (1))。この結果は、非晶質酸化物の表面に、構造が規定されかつ高活性な触媒活性点構造を均質に合成したとして、また、金属酸化物触媒の構造―活性相関 を論ずる上での重要なモデルとして注目を集めた。その後も、この線に沿った研究は、他の金属ダイマーへの展開を含め、同グループにおいて断続的に続けられ (Irダイマーに関する第106回触媒討論会(2010)の報告など)、その報告には初期のモリブデンダイマーの結果が引用されている。
 しかし、モリブデン酸化物ダイマー触媒の存在に否定的な報告例があるものの(参考資料(2))、文献で知る限りでは実験的に再現できたとの報 告はないようである。なお、Mo2核錯体を酸化物表面に担持した報告は複数例あるが、多くは、低温あるいは不活性な雰囲気で存在するものであり、ここで取 り上げるテーマとの関連は薄いものと思われる。
 以上、モリブデン酸化物ダイマー触媒に関する上記(1)、(2)および(3)について、実験条件を考慮しながら実験事実を確認し、実験結果の解釈、意義 などについて討論することは、今後の触媒化学・技術の発展にとって重要でありかつ有益であると考え、公開討論のテーマとして提案する次第である。関連する 新しい実験結果やその解釈があればそれらを紹介いただき、それらをもとに議論を深めることができれば、さらに意義深い討論になるものと期待される。また、 EXAFSを適用することで、表面に形成した酸化物クラスターの微細構造やその動的構造変化がどこまで解明可能であるのか、EXAFSの専門家の見解をお 伺いしたい。

参考資料(1)
岩澤氏らの研究グループは、1980-1985年にかけて非晶質シリカ表面にMo2核錯体を前駆体としてMo酸化物ダイマーを固定化した触媒を作成し、触媒反応におけるダイマー構造の重要性を主張している(下記の論文)。同様の内容は触媒討論会等でも発表された。
1) Y. Iwasawa, et al., Chem. Lett., 1980, 1165; 2) Y. Iwasawa, M. Yamagishi, S. Ogasawara, J. Chem. Soc. Chem. Comm., 1980, 871;
3) Y. Iwasawa, M. Yamagishi, J. Catal.,
1983, 82, 373; 4) Y. Iwasawa, H. Tanaka, Proc. 8ICC (Berlin), Vol. IV, p 381;
5) Y. Iwasawa, et al., Z. Phys. Chem. N.F., 1985, 144, 105-115
岩澤、小間著、『表面の化学』(丸善、1998、第2刷、p79)によれば、「EXAFSその他の分光法により構造を決めたMoダイマー(Mo6+− Mo6+ダイマー構造=隣接する2個の酸化物モノマー)は、エタノール酸化反応に対し、従来のMo触媒より約一桁活性が高く、この構造と
Mo5+−Mo5+ダイマー構造の間の変換が起こる度に、エタノール1分子からアセトアルデヒドへの酸化反応が進行する。その際、モリブデン2個の原子間の距離が約0.4Å、単体のシリカとの距離が約0.1Å変化する」(要約)とある。

参考資料(2)
以下のように、他の研究者により否定的な結論が出されている。
1)Wachsらの論文 (J. Catal., 1994, 150, 407)の結論には、"The formation of dimeric molybdenum oxide species derived from allyl compounds is not observed.”とある。なお、彼らは、ダイマー触媒の存在を否定する論文発表している(例えば、J. Phys. Chem., 2007, 111, 14410)。
2)Kikutaniの論文(J. Mol. Catal. A: Chemical, 1999, 142, 247) の結論には、
“The dispute about the fixed molybdenum catalysts was settled by demonstrating that many features proposed for the unique fixed monomer and dimer catalysts can be also observed in Mo/SiO2 catalysts prepared by other methods. It was also demonstrated that interpreting those features as evidence for uniform monomeric or dimeric sites is full of inconsistencies. Reduction of Mo/SiO2 catalysts by ethanol is a complicated process in which at least two distinctive structures are involved rather than a simple one-step reaction proposed for the fixed monomer and dimer catalysts.”と記されている。なお、触媒反応機構については、後続する論文でも議論されている(J. Mol. Catal. A: Chemical, 1999, 142, 264)。



2-1            
岩澤康裕(正会員)
  本テーマは私のおよそ30年位以上前のMo ダイマー触媒の論文が討論テーマとしてアップロードされ、1回目SMSIのテーマとの提案の仕方の違いに困惑し、正当な科学的討論に疑念を抱き、また、米 国や触媒学会の友人らへの配慮から、これまで討論に参加しなかった。本テーマは特定の研究者(私)の研究・論文を標的としてのウエッブ公開討論設定であ り、記載されている内容が恣意的にネガティブな印象を与えるようなものとなっており、公平に科学的な議論ができる設定になっていないことを指摘しておく。

  Moダイマー触媒は(Moモノマー触媒も同様)、およそ30年位以上前(1978-1985年に論文発表)に私と共に学生計7人がそれぞれ独立に行った研 究で相互に再現性があり、XAFS, XPS, 拡散反射UV/VIS, ESR, ラマン, FT-IR, ホトルミネセンス、ガス滴定等のキャラクタリゼーションを含めて多くの実験により、シリカおよびアルミナ担持Mo6+, Mo4+, Mo2+ダイマー触媒に関して15報以上の論文が国際誌に掲載されていて相互に矛盾なく問題がないと考える。本触媒調製法では、Mo-Mo結合を持つ Mo23-allyl)4有機金属錯体を前駆体に使いシリカ担体上に
Mo4+を固定化し、水素還元して配位子を除いてMo-Mo配位数1のMo2+ダ イマーを形成させ、続いて量論酸化でMo4+、そしてMo6+ダイマー触媒(Mo6+-dioxo構造のペア)を形成できること、逆にMo6+ダイマー触 媒は水素還元によりMo2+ダイマー触媒に完全に戻ることを報告した。酸化型のMo6+触媒だけでなく、Mo6+, Mo4+, Mo2+ダイマー触媒の相互の構造変換過程もきちんと研究したのは我々だけである。米国のProf.Wachsらが私と同じMo(η3-allyl)4Mo23-allyl)4を前駆体に用いた有機溶媒中での固定化触媒調製法により得たシリカ担持Mo6+触媒をラマン測定し、前述の幾つもの分光法で の解析結果から私が報告したMo6+-dioxo構造と違うMo6+-monooxo構造(オリゴマー的構造も一部含む)を報告し (J.Phys.Chem., 95, 8781 (1991)等)、私の担持Mo6+触媒の構造が間違いであるという記述がされたが、それは構造設計条件である低担持量(約2.5 wt%以下)を大幅に超えた担持量でのものである。Prof.WachsのMo触媒試料は米国のProf.Ekerdtが提供したもので (Prof.Wachsとの共著論文の筆頭著者である学生のC.C.Williamsが合成)、彼らのMo触媒を送ってもらい(私も試料を送った)、 EXAFSをPFで測定して1993年にそのスペクトルデータを送った。また、Prof.Wachsにもデータ結果を文書で説明した。私の注意深く固定化 設計したMo触媒(Mo=OとMo-OSiを含むMo6+-dioxo構造)とは異なり、不均一で解析できない類のEXAFSスペクトルであった。因み に、飯塚先生(当時京都工繊維大)は上記Mo有機金属錯体を用いて私と同様のEXAFSスペクトルを与えるシリカ担持Mo6+触媒を調製し興味深い反応特 性を報告している(J.Chem.Soc.Faraday Trans. 92, 1249(1996))。EXAFSデータにより彼らの触媒がきちんと設計調製できていなかった事を知った後、Prof.EkerdtらはMo触媒研究を止めてしまい その後の論文は見られない。Prof.Wachsはそのような事実を知りながらそれに触れずに、その後も以前の彼らの試料のラマン研究論文を報告したこと は問題かも知れない。

  Web公開討論提案者3氏が取り上げたJ.Phys.Chem.C (2007)の論文では、私とは異なる踏襲的な(NH4)6Mo7O24無機塩前駆体を用いて水溶液でのincipient wetness 含浸法で調製したシリカ担持
Mo6+触媒のラマンが報告されているが、この中で、私のこれまでのMo6+-dioxo構造が主たる構造であると結論されて いる。つまり、以前はMo6+-monooxo(MoO4)、MoO5やMoO6(6配位)等が種々報告されたが(Prof.Ekerdtらとの彼自身の 共著論文も含めて数報引用されている)、現在の結論はそうでなく、シリカ担体上にMo6+-dioxo構造が主として形成され、dioxo構造は6族金属 (Cr, Mo, W)酸化物に一般的であると述べられており、私の報告のMo6+-dioxo構造と一致する。同じ段落に私の論文が言及されているがどういうわけか、酸化 型のMo6+-dioxoでなくエタノールとの反応後に形成される還元型のMo5+-酸素架橋ダイマー構造が引用されている(単に引用ミスなのか悪意的な のか不可解)。上記のProf.Wachsらの論文は5−7族酸化物(V2O5, Nb2O5,, Ta2O5,, CrO3, MoO3, WO3, Re2O7,)の構造をラマンを主として議論したもので、提案3氏が言うような私の論文を標的にしたものでない。また、3氏が取り上げたKikutaniの 論文とあるのは私の元学生の単独名の論文でありデータも科学的議論も乏しくコメントする必要ないと考える。最近のProf.Hessらの ChemPhysChem. 14, 441 (2013)の論文やProf.HandslikらのJ.Phys.Chem.C 116, 5571 (2012)の論文においても、ラマンやDFT理論計算によって、SiO2表面に担持されたMo(5.9 wt%)は約80%がMo6+-dioxo構造でありMo6+-monooxo構造はminor種であり、低担持程Mo6+-dioxo構造が多くなるこ とが報告され、私が報告したMo6+-dioxo局所構造がSiO2上で安定に存在することは共通認識になりつつあると思われる。




2-2   御園生 誠(名誉会員),田中虔一(非会員),難波征太郎(正会員)

 本件は、著者ら自身が最近も引用し、回答によれば関連する論文が最近も出ているので、現在も討論に値する研究結果ということになるでしょう。
 ところが、今回の回答では、当方が論点としてあげた点については殆ど答 えられていません。最も問題なことは、回答ではMoがジオキソ体かモノオキソ体かを論じ、ジオキソ体が約80%とする報告をあげていますが、これはモノ マーについてであり論点とは全く関係がありません。
論点は、 Moダイマー(Moオキソ体2個が結合または近接したペア)です。Moダイマーがアモルファスシリカ表面に均質かつ安定に生成し、それが選択酸化を高活性 に触媒するというのが当初からの主張だったのではないですか。まずは、ダイマー構造に関して回答をお願いします。なお、触媒化学にとってさらに興味深いこ とは、このダイマー種が高活性・高選択的な触媒種であることですので(論点2)、この点についても回答をお願いいたします。




2-3             岩澤康裕(正会員)

 前回の回答(2-1)にて述べたように、Moダイマー触媒はおよそ30年位以上前(1978-1985年に論文発表)に15報以上の論文として発表されている。この中では、シリカおよびアルミナ担持Mo6+, Mo4+, Mo2+ダイマー触媒に関してXAFS, XPS, 拡散反射UV/VIS, ESR, ラマン, FT-IR, ホトルミネセンス、ガス滴定等の多くのキャラクタリゼーションがなされている。Mo23-allyl)4有機金属錯体を前駆体に使って調製されるMo2+ダ イマー触媒は、in-situ XAFS解析によれば、例えばシリカ上では、シリカの種類により0.258 nm〜0.280 nmのMo-Mo結合を持ち、元の錯体の0.2183 nmより伸びている。Mo-Mo配位数は0.6-1.1でありダイマー構造を示唆する。これらMo2+ダイマーを量論的にO2酸化することにより典型的にはMo6+-dioxoペア構造が形成される。この時の隣同士のMo6+-Mo6+結 合は室温では観察されず80 Kに冷やすことで初めて0.304 nmに観察され、rigidな架橋酸素型でなくペア構造を示唆する。その配位数は0.5と若干小さめの値を示すが、シリカ表面の不均一性を反映し、全ての Mo種が0.304 nmの値の距離にあるわけではないためと思われる。ホトルミネセンスクエンチ法によればMo6+種は93%以上の均一性を持っていると示唆される。Mo(η3-allyl)4モノマー錯体を前駆体に使って調製されるMo6+モノマー触媒では、低温でもMo-Mo結合は全く観察されず、モノマーとして高分散している。Mo-dioxoペア構造を持つMo6+ダイマー触媒をH2で還元すると完全に元のMo-Mo結合を持つMo2+ダイマー構造に戻る。Mo2+ダイマーは水素化に極めて高い活性を示す。Mo6+ダイマー触媒はエタノール酸化活性を有し、0.292 nmのMo-Mo結合(Mo-Mo配位数:1)を持つ中間体と0.261 nmのMo-Mo結合を持つMo5+ダイマー(酸素架橋)(Mo-Mo配位数:0.5)中間体(いずれも低温にすることなく室温以上でMo-Mo結合が観察される)を経て触媒作用が進行することをin-situ XAFS等を用いて報告した。Mo6+ダイマー触媒上では、4配位Moによるエタノール吸着能、適当な距離にある隣のMo=OによるエトキシCH活性化、安定なMo5+ダイマー種形成によるCH切断促進等により反応が容易に進む。以上の事は上述のように既に幾つもの論文に報告され議論されており、これ以上の繰り返しの議論は避けたい。詳細は論文を参照されたい。



2-4   御園生 誠(名誉会員),田中虔一(非会員),難波征太郎(正会員)
 ー公開討論(Moダイマー触媒)2-3に対する意見ー
 前回の回答(2-1)にて述べたように、Moダイマー触媒はおよそ30年位以上前(1978-1985年に論文発表)に15報以上の論文として発表されている。

 この触媒を公開討論のテーマに取り上げた理由は、この問題が不均一系(固体)触媒化学の研究のあり方に深く関わっているからである。すなわち、(1)触 媒の活性点構造、(2)活性点の機能を含む反応機構を明らかにし、(3)これらを高性能触媒の開発につなげるための科学的な研究のあり方の問題である。
近年、種々の測定機器やコンピュータの発達に伴って、不均一系触媒(固体触媒)の研究にもこれら機器やコンピュータが頻繁に用いられるようになったが、測 定された構造の平均値や計算結果を作業仮説に都合よく当てはめることだけで仮説が実証されたと錯覚している例が少なからず見られる。元来、不均一系触媒化 学は、不均質かつ非晶質物質の表面を対象とすることが多いので、平均構造の情報を与える各種分光法によるキャラクタリゼーションから活性点構造やその機能 を推定するには慎重な実験と議論が必要である。
Mo-ダイマー触媒仮説(下記注)は、その意味で格好の例であり、いまだに実証されたとはいえず(下記1参照)、類似の仮説が類型的に他金属種に想定され るにとどまり、Mo-ダイマー仮説を前提にした新しい意味のある発展は基礎においても実用においてもみられない。この意味でも、ここに提示した公開討論 は、触媒研究のあり方を見つめ直すよい機会であり、触媒化学の基礎研究および応用研究の発展に貢献するものと考えている。
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(注)非晶質SiO2に担持したMo化合物を、特定の条件で処理して得られるMo-Mo距離の平均値から、Moが (Mo6+-Mo6+) ↔ (Mo5+-Mo5+) と可逆的に変化してエタノールの酸化反応に分子レベルで1:1に連動する、そして、その触媒活性が通常のSiO2担持Mo触媒より約一桁高いとする岩澤氏らの仮説。(本公開討論2の参考資料(1)参照)。
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しかるに、これまでの公開討論の推移をみると、討論は全くのすれ違いである。岩澤氏は自らの研究例を多数引用して回答しているが、驚いたことに、その内容は、当方が先に提起した論点とはほとんど関係がない。典型的な例が、回答2-1にある「Mo6+-dioxo 構造が約80%であり当初主張した構造が共通認識になりつつある」との見解につながる記述である。回答中に引用されている最近の結果は、いずれも論点であ るMoダイマー構造に関するものではない(Moモノマーのdioxo体が対象であることは原報を見ればすぐわかる)。つまり、この回答は「Mo-ダイマー 仮説」の実証に全く関わりがない。そこで、2-2において、この点に絞って質問したのだが、これに対する回答2-3においては一切触れられていない。
このまま討論を続けても肝心な点は明らかにならない恐れが多分にあり、このこと自体が研究のあり方の本質的な問題を示しているといえよう。ここで、とりあえず、これまでの公開討論で、少なくとも次の2点が明らかになったことを確認しておきたい。
1.    非晶質シリカ表面にMoダイマー構造が主要な種として生成したことを確認した第3者からの報告例はない。第3者による再現実験はその実証には不可欠であ る。他方、否定する報告は複数例ある(討論2参照。Wachs氏は幅広い担持量について調べている。Kikutani氏は岩澤研究室で実験をしたと思われ る)。
2.    Moダイマー構造が、既往のMoモノマー構造など(触媒調製法により触媒活性は大幅に変わるので比較対象の選定法が肝心である)に比べて大幅に高い触媒活性を有することを実証した報告はない。




2-5             岩澤康裕(正会員)
Moダイマー触媒キャラクタリゼーションについては前回の回答2-3で述べたが、シリカおよびアルミナ担持(Mo6+)2、(Mo4+)2、(Mo2+)2ダイマー触媒に関してXAFS (Mo-Mo結合の有無、配位数およびその変化の直接観察)、XPS(従来触媒に比べて均一なMo6+)Mo4+ピーク)、拡散反射UV/VIS(従来Mo触媒と異なる4配位Mo6+など)、ラマン(dioxo Mo6+と矛盾無し)、ホトルミネセンス(従来Mo触媒より遥かに高い均一性(約93%))、ガス滴定(従来Mo触媒では見られない(Mo6+)2(Mo4+)2(Mo2+)2間の量論的変換)等の多くのキャラクタリゼーションを行い、互いの構造や触媒反応性((Mo6+)2:エタノール酸化、プロペン選択酸化;(Mo4+)2:メタセシス;(Mo2+)2:エチレン水素化、エタン水素化分解)を総合的に議論し、およそ30年位以上前(1978-1985年に論文発表)に15報以上の論文として発表している。これ以上の繰返し、蒸返しの議論は避けたい。詳細は論文に議論されているので参照されたい。
我々の研究アプローチや研究の考え方は、幾つも他の著書や論文にポジティブに引用されてきた。例えば、我々が始めたXAFSによる触媒のin-situ characterizationは今日、世界の多くの研究者が行っており、Prof. Bert Weckhuysenらのoperando手法に派生発展している。最近では燃料電池触媒in-situ時間分解計測法等への発展も見られる。また、固定 化触媒およびその関連研究分野で我々と同様の視点・アプローチは、例えば、前国際触媒学会長・第16回国際触媒会議(2016)組織委員長のProf. Can Li、ACS catalysisのEditor-in-ChiefのProf. Christopher W. Jonesなど多数が活躍しており、また、東大のProf. Shu Kobayashiらが有機合成へと展開しており、国際シンポジウムInternational Symposium on Relations between Homogeneous and Heterogeneous Catalysis (ISHHC)がおよそ2年毎に開催され(2011年にドイツ・ベルリン(組織委員長:Prof. Hajo Freund)、2013年に札幌(組織委員長:Prof. A. Fukuoka;参加者600名以上)、2015年にオランダ・ユトレヒト(組織委員長:Prof. Bert Weckhuysen))大きな成果をあげていることを申し述べておく。




2-6   御園生 誠(名誉会員),田中虔一(非会員),難波征太郎(正会員)
2-5に対する見解

 今回の回答(2−5)は、当方の見解(2−4)中に示した中間総括1および2、つまり、「シリカ担持Moダイマー触媒の『構造』と『性能』は、第3者がいまだ再現していない」ことを認めたものと理解する。
なお、2-5に紹介された自身らによる各種の構造解析は、いずれも触媒作用との対応は極めて不十分で(原理的に困難)、実証性があるとは言えないことを指摘する。
また、回答中に述べられた後続する関連研究の内容は再現性とは関係がない。





2-7   御園生 誠(名誉会員),田中虔一(非会員),難波征太郎(正会員)
Moダイマー触媒について、少なくとも下記の確認を要望します。
すなわち、討論部会に当方が提出した直近の見解(2−6)にある

          「シリカ担持Moダイマー触媒の構造と性能は、第三者により再現されていない」

ことを確認ください。


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